東日本大震災と阪神大震災の地震動を比較するため、それぞれの測定地点付近の被害も確認
してみた。測定地点は、宮城県のK‒NET 築館とJR西日本の鷹取駅構内である。
築館では震度7 で全壊率0%であるのに対して、鷹取では震度6強で全壊率60%に迫る程だ。
単純にマグニチュードや震度の大小では建物被害は比例しないということになる。
阪神大震災は、全半壊の住宅が合わせて約25 万棟という大きな建物被害を起こした。
死者6,432名のうちの約80%が住宅倒壊による圧死と言われている。
なぜ、これほど倒壊したのか。東日本大震災と阪神大震災の応答スペクトルを分析する。
揺れの特徴を見ると、2つの地震に大きな違いがあることがわかる。
東日本大震災では短い周期の強い揺れが長時間続いたのに対して、阪神大震災では比較的
周期の長い揺れが観測されている。
「疑似加速度スペクトル」と「疑似速度応答スペクトル」の比較
「国土技術政策総合研究所、K-NET 観測記録の応答スペクトル」から抽出
【東日本大震災=K-NET築館】 | 【阪神大震災=JR鷹取駅】 | ||||||
加速度応答スペクトル | 加速度応答スペクトル | ||||||
周期0.2~0.3秒 3000ガル以上 | 周期0.2~0.3秒 2000~2500ガル | ||||||
周期1~1.5秒 300~500ガル | 周期1~1.5秒 最高値2700ガル | ||||||
速度応答スペクトル | 速度応答スペクトル | ||||||
周期0.2~0.3秒 最高値480カイン | 周期0.2~0.3秒 80~130カイン | ||||||
周期1~1.5秒 60~90カイン | 周期1~1.5秒 最高値530カイン |
地震では震度の他に最大ガルとカイン値が発表されるが、この値が震災被害の大きさを示し
ていないことは良くある。
それはK-NET築館の「周期0.2~0.3秒のガル・カイン値」は、阪神大震災JR鷹取駅より大き
いが、阪神大震災JR鷹取駅に比べK-NET築館の「周期1~1.5秒のガル・カイン値」は、共に
小さいことに着目することが必要である。
木造家屋や中低層建物が大被害を起こす地震動は、短周期の最大ガルとカイン値ではなく、
周期1~1.5秒のガル・カイン値の大きさに関係するということになる。
ということは、ほとんどの木造家屋や中低層建物は0.1~0.5秒の固有周期を持つことは既に
わかっているが…本来の固有周期では、共振をしないはずのそれよりも長い周期1~1.5秒の
地震動で、大きな建物被害が起きるというのは奇妙な現象に思える。
次回へ続く………。