地震では震度の他にgal値が発表されますが、このgal値が震災被害の大きさを示していない
ことが良くあります。
建物の耐震性と震災でのgal値を比較する時には、そのgal値の周期も考える必要があります。
東日本大震災での水平最大加速度は宮城県栗原市築館の2765galですが、この観測点の被災
状況を確認した資料によると、周辺での住家全壊被害数は3棟でした。
観測点から約300m北西にあるRC造4階建ての栗原市役所では4階の天井に被害が見られた
程度で、外観上の被害は見られなかったそうです。
一方、宮城県大崎市古川では、水平最大加速度は583galで住家全壊被害数は154棟でした。
大崎市古川地区 では杭基礎の公立中学校の耐震改修が予定されていた校舎が沈下・傾斜す
る被害があり、また、大崎平野の堆積盆地にある観測点であるK-NET古川観測点近傍の免
震構造建物の免震装置が損傷被害を受けました。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
それは、栗原市築館の地震動の一回の揺れのほとんどが0.1秒から0.5秒以下という極めて
短い周期帯にあり、瞬間的に大きな力が発生しても作用時間が短く、建物に大きな変位を
生じさせるに至らなかった…。
それに比べ、大崎市古川では1秒から2秒の長い周期帯だったため、継続して建物に大きな
変位を与えてしまったと考えられます。
地震では様々な周期の振動が発生しますが、報道発表時のgal値はほとんどがその中で最大
の値を公表しています。
25万戸の家屋倒壊が生じた阪神大震災(最大818gal)と比べると、これらの地震は短い周
期のgal値が大きく、1秒以上の周期のgal値は小さくなっています。
例えば3000galの場合、0.2秒周期の振動(0.1秒ごとに逆方向の加速度が発生)だと揺れ
幅は数センチにしかなりませんが、2秒周期なら揺れ幅は数メートルにもなり、運動エネル
ギーで1000倍の差があります。
言い換えれば、短かい周期だから非常に大きなgal値が計測されたと言えます。
これらから、震災被害と最大加速度は比例しないということがわかります。